海外旅行中の狂犬病リスク管理と動物咬傷後曝露予防接種(PEP)手順
狂犬病ウイルスの神経親和性と発症後致死率、曝露後直ちに行う創傷洗浄法、狂犬病免疫グロブリン(RIG)の局所浸潤、事前の暴露前予防接種(PrEP)を解説します。
発行・訂正窓口:infostoa · 編集基準
この記事の個別の執筆者・専門査読者の情報は提供されていません。
1. 渡航中に注意したい狂犬病曝露
狂犬病は、感染した哺乳類の唾液が咬傷・引っかき傷、粘膜、または傷ついた皮膚に触れることで感染し得るウイルス疾患です。臨床症状が始まるとほぼ常に致命的ですが、曝露直後の創傷処置と適切な曝露後予防(PEP)によって発症を防げます。感染源はイヌに限らず、コウモリや一部の野生哺乳類も含まれます。動物の外見だけで感染の有無を判断することはできません。
2. 咬傷・引っかき傷の直後に行うこと
石けんと流水で傷を直ちに十分洗ってください。CDCは咬傷・引っかき傷を石けんと流水で20分以上洗うよう案内し、WHOは約15分間の洗浄を勧めています。洗浄だけで曝露評価が済むわけではありません。傷が小さく見えたり動物が健康そうに見えたりしても、できるだけ早く医療機関または現地の保健当局に相談してください。動物の種類、場所、接触時刻、傷や粘膜に唾液が触れたかを記録すると評価に役立ちます。
3. PEPは曝露状況と接種歴に応じて決まる
医療従事者は、皮膚が傷ついたか、唾液がどこに触れたか、渡航先の狂犬病状況、過去の接種歴を踏まえ、ワクチンや免疫グロブリンの必要性を判断します。WHOの曝露カテゴリーは初期評価の参考になりますが、自分で分類して受診を遅らせないでください。CDCの指針では、接種歴のある人とない人でPEPの内容が異なります。ワクチンの種類・日程や免疫グロブリンの使用は、国の指針と個人の状況によって変わるため、オンラインの日程を自己判断で適用しないでください。縫合が必要でもPEPを遅らせないでください。特に未接種者では、可能な場合、免疫グロブリンを創部に投与した後の縫合を医療従事者が判断します。
4. CDC渡航医学専門家の見解:渡航前接種の役割と限界
CDC Yellow Bookの章著者Ryan M. WallaceとDavid R. Shlimは、渡航先のリスク、予定する活動、滞在期間、安全なPEPに速やかにアクセスできるかを踏まえて、渡航前予防接種(PrEP)の必要性を検討するよう案内しています。PrEPを受けても、曝露後の医療相談が不要になるわけではありません。CDCの指針では、接種歴のある人も曝露後に追加のワクチン接種が必要で、免疫グロブリンはそのグループには推奨されません。未接種者の対応は異なります。遠隔地への旅行前に医療従事者とPrEPや現地の診療体制を相談し、曝露があれば直ちに医療機関を受診してください。
出典・参照文献: WHO: Rabies Fact Sheet / CDC Yellow Book 2026: Rabies / CDC Yellow Book 2026: Zoonotic Exposures