木材は周囲の湿度に応じて水分を出し入れする

木材は家具や建物になった後も含水率が変化します。米国農務省Forest Products LaboratoryのWood Handbookは、木材の水分状態が周囲の相対湿度との平衡に近づき、季節変化は日々の小さな変動より寸法に影響する場合があると説明しています。塗装は変化を遅らせても完全には防ぎません。使用場所の平均的な環境に近い含水状態で加工・設置すると、大きな寸法変化を抑えやすくなります。Wood Handbook第13章 USDAの研究概要

木材は全ての方向に同じように動くわけではありません。木目に沿う長さ方向の変化は比較的小さく、年輪に対する放射・接線方向で収縮が異なります。樹種、製材方向、乾燥時の状態、使用場所の湿度によって変わるため、どの作品にも適用できる一つの数値はありません。

木組みは動きを消すのではなく、機能を保つ

ほぞとほぞ穴は部材を結びますが、幅広い板が季節で横方向に動くことまでは止めません。框の中に板を入れる構造では、板の木目と框の向き、溝の中で板が動ける余地を確認します。固定点や接着剤を増やして動きを完全に止めようとすると、割れや反りの危険が高まる場合があります。必要な隙間は樹種、板幅、含水状態、屋内外の条件に応じて設計します。

製作前に木材の含水率、使用場所、板幅、木目方向を調べます。USDAのWilliam T. Simpsonは、設計が適切なら、完全に乾燥していない材料でも多少の寸法変化を許容できると説明しています。塗装が木材を完全に封じる、あるいは伝統的な木組みならどの環境でも変形を防げると考えてはいけません。

例:框の中に入る幅広い板

架空の扉で、幅広い板を木組みの框にはめるとします。まず板の木目が幅方向に走るか、扉が安定した室内に置かれるか、季節湿度の大きい場所に置かれるかを確認します。端をすべて強く接着する前に、図面と木材の含水情報を見て、幅方向の動きを許容する設計か確かめます。予想される変化が大きい場合や屋外に面する場合は、溝幅を勘で決めず、樹種別データと木工設計資料を用います。

設置後は、扉がこする位置、隙間、割れを日付とともに記録します。変化が起きたらすぐに削るのではなく、室内湿度、木材の含水率、仕口の固定方法を確認します。そうしないと季節変化を木組みの欠陥と誤診することがあります。

製作・点検の確認項目

  • 1. 樹種、木目方向、板幅、初期含水状態を記録します。
  • 2. 作業場所と使用場所の季節湿度の違いを考慮します。
  • 3. 幅広い板が設計どおりに動ける余地を確認します。
  • 4. 塗装や接着剤が寸法変化を完全に防ぐとは考えません。
  • 5. 季節ごとの隙間・反り・割れを記録し、調整の根拠にします。

木組みの役割は木の動きをなくすことではありません。木目の方向と環境を踏まえ、材料が動いても仕口の機能が保たれるように設計することです。

参考資料