1. 酸性化とフィチン酸分解は同じ現象ではありません

フィチン酸は穀物に含まれるリンの貯蔵形態で、消化時に一部のミネラルと結合することがあります。サワードウでは乳酸菌が酸をつくり、生地のpHを下げます。その環境変化が穀物にもともと含まれるフィターゼの働きを促す場合があります。したがって、分解を乳酸菌自身の酵素だけで説明するのは正確ではありません。Realeらの研究では、使用した乳酸菌株による差は認められず、穀物由来フィターゼを加熱で失活させるとフィチン酸分解が失われました。この結果は、発酵による酸性化と穀物酵素の関与を示しています。

2. 24時間後の減少率は穀物ごとに異なりました

報告された粉の発酵試験では、24時間後のフィチン酸減少率はライ麦で100%、小麦で95~100%、オーツ麦で39~47%でした。減少の程度は穀物自身のフィターゼ活性と関連し、測定活性はライ麦・小麦でオーツ麦より高いものでした。これは試験に用いた粉と条件での値です。すべての品種、スターター、水分、温度、家庭製法で同じ結果になることを意味しません。研究は穀物差と酵素の役割を説明しますが、一般的なパン作りで完全分解を保証する時間や方法を定めてはいません。

3. フィチン酸の低下だけでは健康効果を断定できません

フィチン酸が減ると、条件によってミネラルとの結合や吸収可能性が変化することがあります。しかし食品中のフィチン酸低下を測定しただけで、鉄・亜鉛・マグネシウムの吸収が誰にでも増える、あるいは長期的な栄養状態が改善すると結論づけることはできません。食事全体、対象ミネラル、個人の栄養状態などが関係します。また、引用した研究はセリアック病の人にとってサワードウが安全であることや、グルテン不耐を改善することを示していません。

4. 専門家の視点:ヒト試験が測定した鉄吸収

別のヒト試験では、健康な女性を対象に全粒ライ麦パンからの非ヘム鉄吸収を安定同位体法で比較しました。試験で用いたパンと摂取条件では、サワードウによって脱フィチン酸化したパンで測定鉄吸収が高くなりました。これは限定された食品・参加者における短期の吸収指標です。貧血の予防、長期的な鉄貯蔵量の改善、他のミネラルや集団でも同じ効果があることを証明するものではありません。測定対象と研究条件を保って解釈すれば、結果を過度に一般化せずに活用できます。

出典:The importance of lactic acid bacteria for phytate degradation during cereal dough fermentation/Influence of sourdough fermentation-induced dephytinization on iron absorption from whole grain rye bread