1. GWASは何を比較するか

ゲノムワイド関連解析(GWAS)は、ゲノムの変異と疾患・形質の統計的な関連を探します。症例群と対照群の変異頻度を比較したり、連続的な形質との関係を調べたりします。複雑な形質には複数の変異と環境が関わりますが、すべての疾患で同じ数の変異が同じように働くわけではありません。

2007年のWellcome Trust Case Control Consortium研究は英国の標本を用い、7疾患それぞれ約2,000人の症例と約3,000人の共有対照をアレイで解析しました。この設計の結果と、その後の異なる標本・技術の研究を同じ解析として扱ってはいけません。

2. 厳しいp値とまとまって見えるシグナル

多数の検定には偶然のシグナルが増えます。理解のため、100万個の検定に真の関連がなく、各検定でp<0.05を使うと仮定すると、偽陽性の期待数は100万×0.05=5万です。これは仮想条件の期待値であり、実際のGWAS結果や100万個のSNPが独立だという主張ではありません。同じ規模のBonferroni計算は0.05/100万=5×10⁻⁸です。Visscherらの2017年の総説では、この代表的なゲノムワイド基準を使っています。すべての研究に必須という意味ではありません。実際の2007年の論文の抄録は、24個の独立した関連シグナルをp<5×10⁻⁷で報告しました。

連鎖不平衡(LD)は変異間の非ランダムな相関を意味します。近隣のSNPがともに受け継がれると、一つの関連領域で複数のシグナルが現れます。最小のp値を持つリードSNPが原因変異とも、最も近い遺伝子が原因とも限りません。相関するSNPをすべて独立した検定対象と説明するのも誤りです。ファインマッピングや機能データは候補を絞りますが、各方法が提供する証拠を個別に確認します。

3. 発見からPRSへ進むとき

ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)は複数の変異情報を組み合わせ、遺伝的なリスク差を要約します。発見標本で推定した変異の効果を別の人のゲノム情報に適用する方法で、SNPの選択や効果推定はスコアごとに違います。有意なSNPの一覧と、独立標本で予測性能を検証したスコアは別の成果物です。

PRSのパーセンタイルは発症確率ではありません。仮にある基準集団で90パーセンタイルなら、その集団のスコア分布上の位置を表し、発症確率90%を意味しません。絶対リスクには疾患、期間、基礎リスク、年齢などの臨床情報を別に結び付ける必要があります。NHGRIもゲノム情報だけのスコアと他の危険因子を区別しています。

結果を読む際は、発見研究の標本・疾患・基準、独立検証に使った集団、関心のある状況とその集団の違いを確認します。祖先集団が異なるとLDや変異頻度などが違うことがあり、以前の予測性能がそのまま保たれるとは仮定できません。2017年の総説や2020年のNHGRI案内にある将来予測・臨床普及の記述を、現在の診療基準として扱わないようにします。

4. 出典