1. ACE阻害の測定は臨床的な血圧低下とは異なります

乳酸菌のタンパク質分解系は乳タンパク質からペプチドを遊離し、その一部が試験管内でアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することがあります。しかし酵素試験の結果だけでは、摂取後の消化・吸収を経て血圧が下がるとは言えません。ペプチドの種類と量、消化安定性、生体利用率、ヒトでの反応を別に調べる必要があります。VPPやIPPなどの特定ペプチドがすべての発酵乳に含まれると一般化することもできません。

2. 1次研究は特定条件の山羊乳発酵を試験しました

Rubakらは発酵食品や母乳から分離した乳酸菌を用い、再構成山羊乳(11% w/v)を発酵しました。菌を2%接種し、37℃でpH 4.6に達するまで培養した後、遠心上清のACE阻害活性やペプチドを分析しました。48時間培養したLactococcus lactis ssp. lactis BD17の試料は、この試験で最も高いACE阻害活性60.33%(IC50 0.297±0.10 mg/mL)を示しました。LC-MS/MSで配列候補を同定し、既報に基づきACE阻害候補を評価しました。これは特定菌株・山羊乳・培養条件での試験管内結果であり、摂取後の血圧を測った研究ではありません。

3. ペプチド候補の同定は降圧効果の証明ではありません

配列を検出し酵素阻害を観察しても、消化後に活性が保たれ、体内に吸収され、有効濃度に達することまでは示されません。引用したレビューは、乳酸菌のタンパク質分解系と発酵乳由来ACE阻害ペプチドに関する研究を整理し、予測された活性には追加の実験検証が必要としています。機序の妥当性や酵素試験を、確立したヒト効果として表現してはいけません。

4. 専門家の視点:血圧への主張にはヒト試験が必要です

いずれの出典も無作為化ヒト血圧試験ではありません。発酵山羊乳が高血圧を予防・治療する、または薬の代わりになることを示していません。臨床効果の判断には、ペプチドの消化安定性・生体利用率に加えて、適切な対照、摂取量、期間、信頼できる血圧測定、安全性評価が必要です。現時点で支持されるのは、特定の発酵条件の山羊乳試料が試験管内ACE阻害活性を示し、今後検証すべきペプチド候補が見つかったという範囲です。

出典:Angiotensin-I-converting enzyme inhibitory peptides in goat milk fermented by lactic acid bacteria isolated from fermented food and breast milk/Antihypertensive potential of fermented milk: the contribution of lactic acid bacteria proteolysis system and the resultant angiotensin-converting enzyme inhibitory peptide