要点:放電は一つの細胞ではなく神経回路の同期として現れる

神経過興奮性とは、脳のすべての神経細胞が常に過剰発火しているという意味ではありません。細胞への入力、もともとの発火特性、結びついた回路の状態が変化し、特定のネットワークで異常な同期活動が起こりやすくなる状態を指します。多くの細胞の電気活動が時間的にそろうと、脳波(EEG)に発作間欠期の棘波や、より持続する発作時放電として記録されることがあります。「興奮が強く抑制が弱い」という説明は手がかりですが、原因や回路の異なる多様なてんかんを一つの機序で説明するものではありません。

興奮性・抑制性信号が神経回路で同期し、脳波パターンに反映される過程を示す抽象的な神経科学イラスト

発作間欠期放電は臨床発作の間に記録される現象で、発作時放電とは区別されます。頭皮脳波は一個の神経細胞を直接記録するものではなく、電極の周囲にある広い組織の電気活動が合わさった信号です。したがって波形はネットワークの活動を考える材料になりますが、それだけで個人の診断、症状の原因、将来の見通しを確定することはできません。

膜電位とシナプス入力が集団発火の条件をつくる

神経細胞はイオンチャネルやシナプスを通じて入力を受け、膜電位を変化させます。グルタミン酸を介する興奮性入力は発火に近づけ、GABAを介する入力は多くの場合、発火を抑えたりタイミングを調整したりします。ただし抑制の働きは細胞の種類、塩化物イオンの勾配、発達段階、回路の状況によって変わります。GABAは常に単純なブレーキではなく、グルタミン酸も発作を起こす単一のスイッチではありません。

同期活動そのものは睡眠リズムや情報処理など通常の脳機能にも見られます。同期しているというだけで病的とは限りません。異常な活動が大きく、持続し、または空間的にまとまることで、てんかん性活動として記録される場合があります。細胞固有のバースト発火、再帰的な興奮性結合、抑制性介在ニューロンのタイミング、細胞外イオン環境などが関わり得ますが、相対的な役割は脳領域、発作の型、実験条件、病期で変わります。

発作間欠期棘波と発作時放電は別の問いに答える

発作間欠期棘波は発作と発作の間に記録される短いてんかん性イベントです。発作時放電は臨床発作に伴う、より長く展開するパターンです。共通する細胞・回路の特徴がある場合もありますが、同じ現象だとは限らず、すべての棘波が発作を引き起こすわけでもありません。条件によって同期した抑制が活動を抑えることもあれば、興奮性の錐体細胞のバーストが発作間欠期様イベントの開始に関与することもあります。細胞の役割は観察対象とネットワーク状態に左右されます。

Hoferらは手術時に得たヒト新皮質組織を切片として維持し、電気活動を調べました。てんかんのない組織にも見られる比較的小さな集団同期活動と、てんかん組織で観察された複雑な発作間欠期様放電を区別しています。後者の非対称な開始には興奮性細胞の発火が関係し、バースト発火する錐体細胞が寄与する可能性が示されました。ヒト組織の細胞活動を観察できる点は重要ですが、切片では長距離の脳内結合が失われ、生体全体の状態を再現できません。この結果をすべてのてんかんの原因としたり、頭皮棘波の細胞起源と同一視したりすることはできません。

「てんかん発生(epileptogenesis)」と「発作発生(ictogenesis)」も区別が必要です。前者は素因や脳損傷の後に、自発発作を起こしやすい脳へ変化していく過程を指します。後者は個々の発作がどのように始まり展開するかを指します。関連はありますが、一方の証拠だけで他方の仕組みまで決められません。

脳波パターンと細胞記録は異なる観察レベル

脳波に記録される発作間欠期棘波は神経回路の電気活動パターンであり、単一ニューロンの発火を直接測ったものではありません。Hoferらはヒト組織で細胞発火と局所電気信号を同時に調べましたが、切片実験の結果を頭皮脳波のあらゆる波形や個人の臨床状態と同一視することはできません。どの方法で、どの実験環境を観察したかが、結論の範囲を決めます。

専門家の視点:発作間欠期活動には複数の機序がある

McGill大学とMontreal Neurological Institute所属の著者M. Avoliによる専門レビューは、辺縁系ネットワークと側頭葉てんかんを中心に、発作間欠期棘波や高周波振動などの同期活動を扱っています。Avoliは棘波の形に幅があり、発生機序も一様ではなく、発作活動との関係も単純ではないと整理しています。レビューにはヒト記録だけでなく動物・in vitroモデルの知見も含まれるため、所見は調べられた条件の範囲で読む必要があります。

参考資料