この研究が示すのは特定条件での一食の反応

2015年の研究では、白米を4℃で24時間冷却して再加熱した条件で、炊きたての白米よりレジスタントスターチ量が多く、食後血糖のIAUCが低かったと報告されました。人を対象とする試験は、健康な成人15人による無作為化・単盲検クロスオーバー試験です。結果は一つの品種、決められた調理・冷却・再加熱条件、少人数、一回の食事で測定したものです。冷やした米が誰にでも血糖を下げる、または糖尿病を治療することを示すものではありません。ここでは一つの試験が比べた条件と結果に限って読み、でんぷんの一般的な仕組み、調理法、食品保存の助言には広げません。

一つの食事試験に使われた炊きたての米と冷却・再加熱米を対比する概念図

成分分析と人の試験では比較条件が異なる

研究者はインドネシア産IR-64白米について、炊きたての対照、約27℃で10時間置いた試験米I、4℃で24時間冷却後に炊飯器で再加熱した試験米IIの三条件でレジスタントスターチを分析しました。報告値は順に0.64、1.30、1.65g/100gです。試験米IIの値が高かったため、人の試験にはこの米と炊きたて米が使われました。室温で10時間置いた米は参加者に提供されていません。人の試験では同じ参加者が別々の朝食日に二条件を食べ、各食事は米125g、標準オムレツ60g、水240mLでした。三条件での成分比較と、二条件だけの食後反応比較を混同しないことが大切です。

血糖の差は測定時刻によって異なる

血糖値は最初の一口と、15、30、45、60、90、120分後に測定され、2時間の増分曲線下面積(IAUC)が計算されました。血糖とIAUCの分析対象は14人です。一人は試験前に普段と異なる激しい運動をしており、その人の値は分析から除外されました。IAUCは冷却・再加熱米で125±50.1、炊きたて米で152±48.3mmol・分/L(p=0.047)でした。ただし全時点で低かったわけではありません。15分値は試験米で高く、30、90、120分は有意差がなく、45分と60分は低い値でした。したがって正確な説明は、一食の2時間IAUCと一部の時点に差が見られたということで、血糖が常に低く推移したという意味ではありません。

IAUCは一時点の血糖値ではなく、観察時間内の反応を積算した指標です。論文では嗜好評価は15人全員、血糖とIAUCは14人と区別して報告し、米の食感差から条件が完全には隠せなかった可能性も記しています。一つのp値はこの小規模試験で見られた差の統計的評価であり、個人にも同じ大きさの変化が起きる保証ではありません。

専門家の視点:小規模試験を食事療法に置き換えない

Harvard T.H. Chan School of Public HealthのNutrition Sourceは、レジスタントスターチを発酵性食物繊維の一種として説明し、調理後に冷やしたパスタやジャガイモなどを例に挙げています。これは用語の背景を補いますが、この白米試験を独立に再現したり、すべての米で同じ効果を証明したりする資料ではありません。試験対象は20~40歳の健康な成人で、品種は一つ、食事は定められた朝食一回、評価は急性の反応です。糖尿病患者、長期的な血糖管理、臨床的な健康結果は調べていません。人数が少なく、一人の血糖データが除外され、米の食感から条件を見分けた参加者がいたことも限界です。品種、炊飯器、冷却時間、再加熱方法、繰り返し食べた場合、個人の健康状態に結果をそのまま当てはめることはできません。成分値が高いこと自体は、健康上の効果が意味あるほど得られる証拠ではありません。測定されたのは食後数時間の反応で、長期の血糖管理や合併症の変化ではありません。この研究は食品安全試験でもないため、安全な保存方法の根拠として使うこともできません。

出典