1. 麹は均一な単一培養物ではありません

Aspergillus oryzaeは醤油や味噌などの発酵食品に使われますが、酵素プロファイルや代謝産物は菌株、基質、培養・熟成条件で異なり得ます。アミラーゼやプロテアーゼがデンプンやタンパク質を変化させるという説明は、麹の働きを理解する一般的な背景です。しかし、それだけで特定の風味や品質が保証されるわけではありません。引用した醤油研究は、異なる酵素特性を持つ二つのA. oryzae株を混合培養した特定の試験を扱っています。

2. 醤油の風味結果は試験した菌株比に依存しました

研究者は、炭水化物分解酵素活性の高い株とタンパク質分解酵素活性の高い株を選び、製麹時の混合比を変えて醤油の風味を調べました。抄録では、比率によって香気特性や測定された旨味・コク味関連成分が異なりました。1:1混合は香気関連の結果、3:1混合は旨味・コク味成分の測定で特徴が見られました。これは対象の菌株と試験条件に限る比較です。すべての黄麹菌、味噌や他の発酵食品で同じ風味が再現されることや、単一比率が常に最適であることを示してはいません。

3. 味噌研究の対象はIMP分解であり、カビ毒ではありません

別の味噌研究は、旨味に関わる核酸成分イノシン酸(IMP)の分解を抑えるため、A. oryzaeスターターの酸性ホスファターゼを標的にしました。特定の菌株・発酵条件において、酵素や関連遺伝子の調節がIMPに及ぼす影響を調べています。評価対象は風味成分であり、アフラトキシンなどのカビ毒を測定して麹の無毒性を確認した研究ではありません。風味成分の変化を微生物学的安全性の証拠として扱うことはできません。

4. 専門家の視点:安全性は菌株と製造条件で評価します

産業利用菌の安全性レビューは、A. oryzaeに長い利用歴がある一方、種名だけで全菌株・全製造条件の安全性を保証することはできないと説明しています。また、近縁種A. flavusとの過去の誤同定が毒素産生性に関する混乱を生んだことから、正確な同定と菌株ごとの評価が重要です。これはA. oryzaeがすべてアフラトキシンを作るという意味ではなく、レビューは誤同定の問題も説明しています。食品用として適切に管理されたスターターを使い、供給者および管轄当局の基準に従ってください。ここで引用した風味研究はカビ毒の不存在を調べておらず、家庭製造品や市販品の安全を保証しません。/Safety of the fungal workhorses of industrial biotechnology

出典:Synergistic effects of co-culturing two Aspergillus oryzae strains with distinct enzyme profiles on soy sauce flavor enhancement/Reduction of the degradation activity of umami-enhancing purinic ribonucleotide supplement in miso/Safety of the fungal workhorses of industrial biotechnology